Liella!3rdライブの『Sing!Shine!Smile!』について
3rdライブの『Sing!Shine!Smile!』、思わず「あ~これだよこれ、このシリーズのライブで俺が期待してるものはこれなんだよ」と大暴れしそうになりました。嘘です。
この曲の何が良かったかと聞かれれば、渋谷かのんの「みんなと一つになれたら」という願いが僕の生きる現実世界で結実したこと、と答える。
アニメでの『Sing!Shine!Smile!』はラブライブ!東京大会で披露された曲であると共に、強敵ウィーン・マルガレーテを打ち破った曲でもあります。
「本当の歌を教えてあげる」と豪語するウィーンに対し、「好きに理由なんかいらないよ」の超絶眩しいパンチラインで勝利を掴み取ったLiella!。これこそが青春です。
東京大会後の11話、神宮競技場の前で行われるかのんとウィーンのやりとりは、ラブライブ!スーパースター!!におけるラブライブ!という大会の価値観を端的に示していると思っています。
「あなたならわかるでしょう?どっちの方が上手かったか。なんなら今から決勝を辞退してもいいのよ?」と言ってのけるなど技術面で勝っていることを確信しているマルガレーテですが、それに対してかのんは「私たちは全員、みんなに歌を届けたいと思って歌っていた。一つになれたらと。その想いは、あなたより強かった」とややちぐはぐな回答をします。
どちらが上手かったかではなく、どちらが良かったか。全てが技術の優劣だけで決まるわけではない、という価値観が僕は好きです。これからの自分を信じさせてくれるから。
時は戻り東京予選、かのんとマルガレーテの対立で焦点になるのは歌へのスタンスです。価値観の衝突の末に勝敗が決まってしまったことは少し悲しく思いますが、こういう思い切りの良い進行が僕は好きです。やっぱり誰しもを傷つけない意見なんて存在しないし、勝負があるからには勝者と敗者が生まれる。勝ち残った側はそれを背負って進んでいかなければならない。今思うと重いテーマを扱っていたと思います。
勝利のために1年生を切り捨てるか否かという決断を迫られたLiella!でしたが、彼女らが出した答えは、変わらず9人で歌うというものでした。
マルガレーテが歌う『エーデルシュタイン』は劣等感や挫折から生まれる孤独で悲痛な叫びのように聞こえます。対してLiella!の『Sing!Shine!Smile!』は「楽しい」という初期衝動を取り戻し、それをみんなと分かち合う曲。
Liella!9人が切り拓いた現在地と純粋な想いがあまりにも透き通っていて、眩しくて、ライブではただステージを見上げることしか出来ませんでした。
そして、『Sing!Shine!Smile!』で歌われる「みんな」には観客も含まれていることを考えると、より一層感動が深まります。
かのんが結女という場所に意味を見出す8話の「Liella!の道が、結ヶ丘の道が、あなたと交わりますように!」の時点でそうなんですが、10話ライブ直前の「たくさんの人に歌を届けよう!」や円陣を組んだ際の掛け声からも分かるように、彼女たちは歌というメッセージを能動的に外の世界へ向けて発信するようになりました。
「みんな」へ向けたメッセージを画面を介さず生で受け取ることが出来たこと。それが何よりも格別の体験でした。
フィクションの出来事がリアルに持ち込まれ、そこに自分も参加することがえも言われぬ感動を生むのです。没入型体験です。フィクションがリアルを侵食するような、こういう瞬間がラブライブ!シリーズにおけるライブの一つの魅力だと思うし、僕はどうしようもなくこの瞬間が好きなんです。フィクションの住人になれたような気がして。この時に抱く感情こそが僕の本当の願いなのだと思う。
あの時、あの場所は何よりも虚構で、何よりも現実だった。
ライブ行く前は運よく当たった仙台だけ見れればいいかなと思ってたけど、結局愛知も弾丸で行ったし所沢も行きたくなっちゃった。あの空間は何度でも味わいたい至福の瞬間です。
爽やかな海風が吹く、わたしの居場所 -ラブライブ!サンシャイン!! Aqours EXTRA LoveLive! ~DREAMY CONCERT 2021~ 感想-
ラブライブ!サンシャイン!! Aqours EXTRA LoveLive! ~DREAMY CONCERT 2021 Day2に参加してきました。2021年、最初で最後のAqoursワンマンライブ。数々のライブをクソみたいな世界に潰されてきた彼女たちが、長い助走期間を経て観客の前で描き出す物語は一体どのようなものだったのか。以下感想です。
僕たちを取り巻く世界は絶えず変わっていく。そんなことは誰もが理解しているであろうことですが、2020年はあまりにも多くのものが大きく変わりすぎた。もちろん良い意味で変わったこともあったでしょうが、2020年を振り返ってまず出てくる言葉は「あんな年はもう二度と来ないで欲しい」です。数々の楽しみが泡となって消えてしまった。
何も影響を受けたのは僕だけではなく(当たり前)、Aqoursが開催を予定していたつま恋凱旋ライブ、6thライブのドームツアーも中止となりました。悲しいお知らせが流れゆく日々。その後オンライン限定の配信ライブは何度か開催されましたが、有観客ライブは開催されずに時間だけが過ぎていきました。
Aqours9人として開催した最後のワンマンライブである5thから、今回のDREAMY CONCERTが開催されるまで要した期間は実に2年半。これ1stから5thまでの期間よりも長いってマジ?毎日会ってたようなもんだったのに。それは嘘。
Aqoursが身近だった日常から想像以上の時が過ぎてしまい、期待と不安が入り交じったまま今までとは違う心持ちで臨んだライブでしたが、変わらない居場所がそこにはありました。自分が見ている今はとてつもない早さで過ぎ去り、沢山のものに影響されて自身も変わっていきますが、確かに変わらないものがそこにはある。そんな温かい手触りが印象的なライブでした。
また、今回のライブの軸となっていた幕間アニメ『今日のAqours』が非常に良かったです。幕を閉じたアニメにエピソードを差し込んでテーマを作る二次創作的なやり方には新しさと驚きを覚えましたが、愚直に“イマ”だけを積み重ねていく高海千歌の在り方は確実にアニメの文脈を汲んでいました。テレビアニメ1期から劇場版までの物語と今回のライブが地続きだった、という質感にただ幸せを感じます。そして、4th、5thを経てそれまでのアニメの物語から解き放たれた声優ユニットAqoursが、なお文脈の上で踊ってくれることに僕は嬉しさを覚えてしまいます。
2021年の締めくくりとしてとても良いライブでした。「明日は明日の風が吹く」と言うように寝て起きれば昨日とは違う朝が訪れますが、それでも変わらない居場所がある幸せが僕に一日を終える勇気をくれるのです。
STIGMA
嘘しかつけない身体に用はなくて
STIGMA / DUSTCELL
この一文だけが妙に質量を持ち、頭から離れなかった。悲壮感という言葉が合うものの、勇壮さより暗鬱さが勝る寂しい歌、そう感じていた。だが、もう一度噛みしめるようにして聞いてみると、その勇壮さが以前よりも舌に残った。
Virtual to LIVE in 両国国技館 2019 私感
VtL両国の備忘録です。気になったところをつまんでいきます。
↓セットリスト
1.Sharpness.../剣持刀也
2.ダンスロボットダンス/剣持刀也、勇気ちひろ
3.Los!Los!Los!/勇気ちひろ
4.メランコリック/椎名唯華cover
5.ロキ/椎名唯華、笹木咲
6.命に嫌われている。/笹木咲
7.恋愛裁判/夢月ロア
8.secret base~君がくれたもの~/夢月ロア、鈴原るる
9.ガーネット/鈴原るる
10.小さきもの/戌亥とこ
11.オトモダチフィルム/戌亥とこ、御伽原江良
12.おねがいダーリン/御伽原江良
13.千本桜/静凛
14.God knows.../鈴鹿詩子
15.バレリーコ/森中花咲
16.気まぐれメルシィ/森中花咲、える、鈴鹿詩子
17.MESMERIZER/える
18.君は薔薇より美しい/ジョー・力一
20.林檎もぎれビーム/鈴原るる、える、ジョー・力一、月ノ美兎、樋口楓
21.MARBLE/樋口楓
22.dream triangle/JK組(静凛、月ノ美兎、樋口楓)
UN1.Virtual to LIVE/にじさんじ
Virtual to LIVE in 両国国技館
1.Sharpness.../剣持刀也
剣持お前かっこいいよ。ライブの掴みとして本当に完璧だった。この曲ライブで初めて聞いたんだけど、剣持刀也イメージソングだけあって愛に溢れてたね。別に作り手じゃないけどファンメイドの曲をこんなデカい舞台で歌ってくれるの凄く嬉しくなっちゃった。個人的に剣持のラップを生で聞けたのが嬉しかったな。剣を鞘に収めて背中を見せるラストのシーンマジでシビれた。
6.命に嫌われている。/笹木咲
イントロが流れ出した瞬間思わず膝に手をつきました。笹木、大好きだぞ!!!嫌いなわけないだろうが!!!笹木咲を好きになったきっかけが『笹木は嫌われている。』だったから本当に嬉しかった。笹木の良いところっていつみても楽しいところだと思うんだけど、そんなやつがこのおっっっもい曲歌うのさすがに応えたね。でも最後に誰やねんを叫ばせて笑いに昇華するのは最高に笹木咲らしかった。
7.恋愛裁判/夢月ロア
じーざすなのだ???
この曲歌うロアちゃんの小悪魔っぷりに堕ちた。左右にぴょんぴょこ跳ねるのとその度に揺れる背中の羽がめちゃくちゃ可愛い。気まぐれなロアちゃんに振り回されてえな…。
いつもと違ってパッキリした声の出し方だったからそのギャップに恋しそうになっちゃったね。
9.ガーネット/鈴原るる
蘇るあの夏の記憶。雲一つない快晴の空、焼けるように肌を刺す太陽の光、麦わら帽子を被った桃色の髪の少女。こちらに振り返り、笑いかける姿はまるで向日葵のようだった。失ってから気づいたんだ。俺はあの夏、鈴原るるに恋をしていた。
そんな記憶ないんですけど。
優しく丁寧に歌い上げる鈴原の姿には思わず涙がこみ上げてきました。
10.小さきもの/戌亥とこ
戌亥とこ、にじさんじの歌姫の名に偽りなし。
イントロのアカペラには思わず鳥肌。画面の向こうで聞くのとは訳が違う。両国国技館を声一つで支配する圧倒的歌唱力には屈するしかない。あの瞬間は正に戌亥とこの独壇場だった。
12.おねがいダーリン/御伽原江良
ギバラさあ...
プレゼント何がいい?やっぱり赤スパ?
本人もパンフで言ってたけどこの曲御伽原江良に合いすぎてるんだよな。最強。
15.バレリーコ/森中花咲
森中この曲歌うには幼すぎるだろ!!!
最近森中三枝のマイクラ配信を見てるんですけど、アッキーナがかざちゃんの歌動画絶賛してたから聞いてたんだよな。そしたらこれよ。最高すぎる。
綺麗に高音が抜けて聞こえるかざちゃんの歌声と曲が合ってて最高。
18.君は薔薇より美しい/ジョー・力一
これさすがに今回一。力一は最高のエンターテイナーだった。マン・オブ・ザ・マッチ、ジョー・力一。異常に伸びるロングトーンにはただ圧倒されるばかり。普段の力一像が3Dになってひょうきんな動きで補強されるめちゃくちゃ解釈の一致って感じだったな。
力一、俺も前より変わってるか?
「大丈夫です」と優しく囁きかける月ノ美兎の心強さたるや。これは「これからも大丈夫」という未来に対する言葉なのかもしれないし、「私たちは大丈夫」という彼女らの実在に対する言葉なのかもしれない。色んな意味を内包した僕らへの言葉。全ての意味をくみ取れるわけではないけれど、思わず身を任せたくなるような優しい言葉が心にストンと小気味好い音を立てて僕の胸へと落ちていった。
20.林檎もぎれビーム/鈴原るる、える、ジョー・力一、月ノ美兎、樋口楓
力一が絶望少女達4人を従えてのセンター。バックのメンバーが豪華すぎるだろ。
鈴原の綺麗なステップとその隣で絶妙にダサいステップを踏み続けるえるちゃん大好きだよ。
「変わったあなたを誰に見せたい?」はさすがにシビれたね。力一、俺もそっち側に行ってやるから待ってろよな。
21.MARBLE/樋口楓
でろーんメジャーデビューおめでとう。所属レーベルが発表されたとき思わず両拳を天に突き上げました。Lantisに無限の信頼。今までの道筋をなぞるような歌詞には涙を誘われました。正直あんまり記憶ないから早く聞かせてくれ。てか作編曲光増ハジメは神だろ。
UN1.Virtual to LIVE/にじさんじ
そう、俺はこの曲を聞きに今日ここまで来たし、ここまで生きてきたんだよ。
この曲は「どうしようもなく今を生きてる」の強烈すぎるパンチラインに尽きる。Vtuberという曖昧な存在である彼ら彼女らだって「どうしようもなく」僕らと同じ「今」この時を確かに「生きてる」。目の前で確かな実在を伴って紡がれるこの言葉にはさすがに感極まって泣いてしまった。
ラスサビ前では全員がバックライトに照らされ、シルエットだけの状態になる。なぜだろう、輪郭だけになるとより確かに存在を感じられる気がする。2次元と3次元の境界なんてものは案外すぐ近くにあるのかもしれない。
そして後に続いたのは月ノ美兎の「行きましょう」という静かでありながら決意に満ち溢れた一言。まるで彼女に手を引かれているようだった。立ち止まるとか振りほどくとかネガティブな選択肢は浮かんでこなかった。胸の中に存在するのは彼女がこれから紡いでいく景色を見てみたいという純粋な好奇心だけだった。
総じてめちゃくちゃ楽しくて満足度が高いライブでした。初出しの発表がたくさんでこれからもにじさんじから目が離せません。Vtuber、正直ここまでの規模の人を熱狂させ動かせるコンテンツになると思ってなかったし、本当にこれからが楽しみ。こいつらの歴史に一枚噛みてえな~~~という密かな野望を携えてこれからも追っていきたいと思います。
夢追翔10万人おめでとう
夢追翔というVtuberをご存知だろうか。
キレのある切り返しと場回しの上手さに定評があるバーチャルシンガーソングライターである。愛称は「ゆめお」。リスナーや同僚であるにじさんじ所属のVtuberから何かとイジられることが多い。袖がない。
また、リスナーから「地獄」と称される全く意味の分からない(古き良き言葉を使うならば「カオス」な)企画への参加や発案を定期的に行っている。何度見ても袖はない。
前述の通り夢追翔はバーチャルシンガーソングライターであり、自ら作詞作曲した曲を歌い動画として投稿している。夢追翔が夢追翔たる所以はこのオリジナル曲にこそある。
彼が歌うのは自身の無力さや世界の冷たさであり、仄暗い感情を秘めた人間の心に強く響く。しかし、彼はそれら全てを理解した上で、なお前へと進む覚悟を歌う。そんな夢追翔の芯の強さは僕の心を掴んで離さない。
世界の空気に抗い夢を追い翔ける覚悟を歌った『死にたくないから生きている』、自分の弱さに向き合いその意義を見出した『弱きに寄り添う』、無力感を包み隠さずに歌いながら自分の歩んできた道筋を肯定する『人より上手に』。
名曲というものの定義はわからないが、僕にとってなくてはならない大切な曲たちである。是非聞いて欲しい*1。
【オリジナル曲】夢追翔 MV 「死にたくないから生きている」【にじさんじSEEDs】
【オリジナル曲】夢追翔 MV「弱きに寄り添う」【にじさんじプロジェクト】
夢追翔は初めての配信で自身を「インターネットのおもちゃにして欲しい」と発言しており、この言葉を裏付けるように、その配信のオープニングで流された映像は当時流行っていたデビルマンMADを自作したものだった。
【#翔onAir】01_夢追翔のファーストライブ【にじさんじSEEDs】
そんな発言をした夢追翔は今日も多方面からイジられている。同僚からはボコボコにされ*2、リスナーからは「また地獄か」「袖を生やすこと以外は何でも出来る男」などと言われたい放題である。
イジられ続けて27年*3、ついに夢追翔はチャンネル登録者10万人を達成した。とてもめでたい。これを祝う記念の配信でBUMP OF CHICKENの『ラフメイカー』を歌った後、いつも通りコメント欄で遊ぶリスナーたちにこのような言葉を投げかける。
歌ってるときコメント見てないんですけど、帰ってきたときにね、「袖メイカー」とかね「ヘルメイカー」とかさんざん言ってくれてますね。ありがとうございます
【#翔onAir】10万人登録者本当にありがとう。好きな歌を歌います。【にじさんじ/夢追翔】
笑いながらそう突っ込む姿は、画面の向こうへ笑顔を運ぶ「ラフメイカー」そのものだった。
【#翔onAir】10万人登録者本当にありがとう。好きな歌を歌います。【にじさんじ/夢追翔】
*1:実はもう1つだけオリジナル曲が公開されている。夢追翔の愛がふんだんに詰まっている。
【オリジナルラップ】夢追翔 MV 「緑仙RAP」(FULL version)【にじさんじ】
*2:最近の例。 エゴサで気づいたんですけど無実です……ハーフの袖無し娘なんて育てていません……今までバーチャル活動楽しかったね……みんなありがとう…… pic.twitter.com/pqMRYaNKwr
*3:「夢を追い続けて27年、バーチャルシンガーソングライターの夢追翔です。」という口上が夢追翔の挨拶である。