どんぶりちゃわん

作品やイベントの雑感等々

朗読で描く海外名作シリーズ「シラノ」 感想。

どうも、サケ茶です。

 

今回は音楽朗読劇「シラノ」の8/9(木)13:00~ の公演を観劇してきました。

シラノ役を武内駿輔さん、クリスチャン役を村田太志さん、ロクサーヌ役を伊波杏樹さんが演じられていました。

 

皆さんご存知かもしれませんが、私は伊波杏樹さんを応援しています。

なので正直に言うと今回の朗読劇、伊波さん目当てでした。

彼女が「シラノ」をどう受け止め、どうロクサーヌを演じるのか。それが見たかった。

しかし武内さん演じるシラノ、村田さん演じるクリスチャン、そして伊波さん演じるロクサーヌ、それぞれに魅力を感じてそう遅くない段階で「シラノ」の世界に引き込まれて行きました。

 

…と言ってもやはり伊波さんを見に来たことには変わりないので、伊波杏樹さん成分多めの文章になります。

そこはオタクだからさ、許してよ。

 

 

 

 

 

ここからは多分にネタバレ成分を含みます。これから本朗読劇を観に行く方、展開等を知りたくない方はブラウザバックをお願いします。まあこの作品、かなり昔の作品だから展開に関してのネタバレ云々ってのもおかしいけどね。でも僕は優しいので。

 

 

 

 

 

 

 

  • 雑感

観劇後まず初めに思ったのは、やっぱりプロの声優さんはすごいなあということ。

声だけでその人物をありありと浮かび上がらせていて、それはもう驚愕の一言。

 

声だけで表現する、ということは僕達が得る情報の大部分を占める「視覚」に頼らないということ(衣装やライトなどの眼から得られる情報もありましたが)。

ですから、観客各々で頭の中に描かれた人物像はかなり違ったと思います。

それがなんとも嬉しかった、観客である僕達が信頼されているようで。

まあその道で食ってるわけでもない僕の想像力なんてたかがしれてるわけですが、「君達は君達の世界を持ってていいんだよ」と言われると、元から誰に許可されるものでもないですが、嬉しくなるのです。

 

映像や特殊技術の発展した21世紀だからこそ、“物語を紡ぐ”ことの原点に戻り、余計な装飾は行わずに衣裳でキャラクターや時代設定を伝え、最小限の美術と照明だけで、物語を、場面を、そしてキャラクターを自由に想像してもらいます。

 

演出家 田尾下哲さんのメッセージより

音楽朗読劇「シラノ」公式サイト

 

あと至極当たり前のことなんですが、フランスの作品に触れるの初めてだよって方にも配慮されていて随分わかりやすい劇になっていたと思います。

観劇するにあたって「シラノ」の日本語訳を読んだんですが、まあ教養不足でわからない部分がたくさんありましたね。

日本でいうところの「大塩平八郎の乱」だったり 「菱川師宣」みたいな歴史的な出来事や人物*1が会話の中で多数出てくるので、そこをばっさりカットして登場人物を3人に絞り(ド・ギッシュ伯爵なども出てきましたが話すのは3人)シンプルになっていたのはフランス初心者にも優しかったかなと。

 

 

 

  • 「シラノ」の世界、3人の演技

いや、本当に素晴らしかった3人の演技。

 

まず武内さん演じるシラノが僕の中のイメージを良い意味でぶち壊してくれました。

武内さんの演技はデレマスのプロデューサーでしか聞いたことがなかったんですが、「あ、こんな力強い声も出せるんだ」と驚かされるばかり。

と思っていたらおどけるようなひょうきんな声まで。

シラノという人物は戦ってみたり、恋に悩んだり、バラードを歌ったりと振れ幅が大きいのですが、自由自在に飛び回る声音でシラノの感情を見事に操っていました。

「シラノ」を読んだ時、物語の結末ゆえ「純愛」だとか「漢」という印象が強かったのですが、生のやり取りでは自分が想像していたよりもユーモラスな一面が際立っていました。

 

お気に入りのシーンは第二場、「ええ」の8連発。

シラノの感情の浮き沈みが小気味よく思わず笑ってしまいました。

 

 

次に村田さん演じるクリスチャン。

こちらは気弱な美男子といった感じ。とても声がお綺麗でした。

第三場のシラノとの掛け合いのシーンや第四場のバルコニーシーンだけを見ると間抜けと評されてもおかしくないようなクリスチャンですが、「さっきのあれは、なかなかバカじゃ出来ないぞ」とシラノが言っているように、クリスチャンの察しの良さのようなものが見られるのが第五場のアラス包囲網。

シラノが書いた告別の手紙を見たクリスチャンは涙の跡があることに気づく。

そこでシラノがロクサーヌに対して想いを寄せていることに気づくような描写。

そしてロクサーヌにクリスチャンの「外面」でなく「魂」を愛していると言われ、彼女が本当に愛しているのは自分ではなくシラノだと思い知らされたクリスチャンはシラノに言うのです、「君はロクサーヌのことを愛しているんだろう?告白するべきだ」と。

その後の「いくら僕が美男子だからって、あなたの幸せを奪う権利はない。そんなのは不当だ!」という言葉。

村田さんの口から紡がれる、綺麗でなおかつ力強いその声だけでクリスチャンの気高き精神が見えるシーンがとても好きです。

 

 

そして伊波さん演じるロクサーヌ

まず、初めの演者3人が登壇する場面で度肝を抜かれました。

先陣を切って登壇するシラノ。続いてクリスチャン。最後に舞台へ来るのはロクサーヌ

舞台上のロクサーヌはシラノと一瞬視線を交えたのち、少し伏し目がちに目をそらしクリスチャンへと視線を向けます。

交錯するロクサーヌとクリスチャンの視線。一瞬の間がありロクサーヌは微笑みます、慈愛に満ちた表情で。

この間なんと数秒。この数秒だけでロクサーヌと2人の関係性やロクサーヌからクリスチャンへの想いが見て取れるのです、まだ物語は始まってすらいないのに。

「舞台女優すご。。。」となった瞬間でした。

この時点で僕のテンションは最高潮、凄いものを観れました。でも彼女の快進撃はまだまだ続きます。

 

今回、伊波さんの声優・女優としての力量を最も感じたのは第六場、ラストシーンです。

アラス包囲網から15年、ロクサーヌ修道院に入り平和な日々を過ごしている。

その15年の歳月をどのように声だけで表現するのか。

その結果はあまりにも自然。

声色が変わっているわけではないのに声に深みが増し、才気溢れる若い女性がどこかあどけなさを残しながらも慎みを持った淑女へと変化していました。

これにはさすがに「あなた一体どこまで行ってしまうんですか…」と思わざるを得ませんでしたね。

正直これは生の演技を観ないと伝わらない。僕が持ち合わせている語彙力では十分に表現しきれません。鳥肌ものでした。

 

あと、第六場のクライマックスでロクサーヌのシラノに対する呼び方が「お兄様!」から「シラノ様!」に変わったの、シラノを親友としてではなく愛する人として意識するようになった心情の変化が表されているようでとても良かったです。

ロクサーヌの心情を乗せた伊波さんの叫びに心が震えました。

伊波さんの純粋な愛を叫ぶ演技というものを観たことがなかったので、この人もう何の役来ても怖くないのでは?とつい思ってしまいました。

 

 

 

  • 最後に

こうして今回はフランスを代表する名作に触れたわけですが、これ伊波さんがいないと出会ってないんですよね。こんなに素敵な作品なのに。

伊波さんが飛び込む世界に僕も飛び込んで、その度に知見が広がって、見える世界が変わって行って。すごく好循環なんです。

ここから思うのは何かに心底夢中になってそこから何かを受け取ろうと貪欲になることは対象が何であっても悪いことではないし、むしろ自分は良い方向に転がっていくのではないかなということです。夢中になる対象自体が悪いことの場合を除いてね。

だから誰になんと言われようが自分の好きなもの・ことは貫き通した方が良いし、自分のことをわかろうともしないやつは鼻で笑い飛ばせばいいんですよね。

こう口で言うのは簡単でも実際にやるのは難しいってわかってるけどね。

ただ、常にそういう気持ちだけは忘れずにいたいなと思うサケ茶でした。

 

 

 

  • おまけ

ロクサーヌの気持ちがわかるという話。

ロクサーヌは初めクリスチャンの「外面」に惹かれましたが、最後には美しい恋の言葉を紡ぎだす「魂」を愛したわけです。

ここではその「魂」がシラノだったというのは置いといて。

 

言い直すと、最初は顔で好きになったけどだんだん中身も好きになっちゃったってわけですよね。

外見から内面へと移ろいゆく「好き」の対象…どっかで聞いたことあるな…。

「あ、これ僕が伊波さんのこと好き*2になった流れじゃん」と気づくのはそう遅くはなかったです。

 

僕が伊波さんを初めて見たとき、「この人めっちゃ美人だ!!!タイプ!!!」と感じたのは今でも覚えています。

でもだんだんと活動を追っているうちに少しだけ内面が見えてきて、僕の魂と強く共鳴しました。語弊がありました。こちらの魂が勝手に打ち震えただけです。

 

冗談はさておき、伊波さんの個性みたいなもので共感できるものが多かったんです。

極度に自信がないところだったり、モノへの向き合い方だったり。

そんな彼女が頑張っている姿から無限に元気と勇気を貰えるんですよね。

さすがに持ってるモノは違いますが。

 

そんな伊波さんの力に少しでもなりたくて。彼女が立ち止まったときには少しでもいいから背中を押すことができる存在になりたくて。彼女が後ろを振り向いたときには「君を応援してる僕はここにいるよ!」と言いたくて。

だから応援するんです、伊波杏樹という人間を。僕はね。

 

ただの1人の人間にかける期待にしては重過ぎるかもしれないけれど今回も、これから多くの人を引き寄せるであろう器の大きさを見てしまったから。

ただの人間が放つ大きな輝きに自分の可能性を信じざるを得ないから、希望をくれるから。

だから伊波杏樹という人間を追いかけていきたい。

 

そんな僕が好きでたまらない伊波杏樹さんとの出会いも顔だったよという身も蓋もない話。

人生を変えるものなんてどこに落ちてるかわからないし、そこらへんの石ころ気軽に拾ってみてもいいんじゃない。磨いたら光出すかもよ。

 

あとやたら中身が中身がって言う人いるけど顔にも正当な評価下されるべきだよね。

顔が良いのはそれだけで大きな武器だぞ。

 

おわり。

*1:例えに他意はありません。

*2:ここでの「好き」は恋とか愛とかガチ恋とかそういう類のものではなくリスペクトに近いものです。