中野四葉は何を想ってブランコを漕ぐのだろう。─五等分の花嫁 第90話 私感─
他人の幸せを願う感情と自分の幸せを願う感情。それは決して相反するものではないはずなのに、どうしてこうもすれ違ってしまうのだろう。
中野四葉はブランコを漕ぐ。思い悩んだときにひとり公園でブランコを漕ぐ四葉の姿を想像すると、どうしようもなく心が痛む。
かつて彼女は全力でブランコを漕いだ先の景色を見てこう言った。
光の一つ一つに家庭が 家族があるんだと想像するとほっこりします
第37話 勤労感謝ツアー②
四葉はどんな気持ちでこの言葉を発したのだろうか。軽い口調でたびたびらいはを妹にしようと画策するが、果たしてそれは本当に冗談だけのものだったのだろうか。風太郎と共にブランコを漕ぎ、初めて彼の満面の笑みを見れたときはどれだけ嬉しかっただろうか。
中野四葉はブランコを漕ぐ。その後ろ姿は否応無く涙を誘われるほどに寂しい。ただただ行ったり来たりを繰り返す遊具はまるで彼女の現状を表しているかのようだ。
本当に彼女はこのまま身を引くつもりだろうか。中野四葉の恋物語はここで終わっていいのだろうか。
いいはずがない。出会ったときから抱き続けてきたその想いを無かったものにしていいわけがない。絶対に報われてほしい。あまりにも身勝手な感情だが、強くそう感じる。
中野四葉はブランコを漕ぐ。振り子のようなこの遊具は、後ろに引かれたあとには必ず前に進む。
ブランコから大きなジャンプを見せたあの日のように、彼女が大きく一歩踏み出せることを心の底から願っている。